美狐はベッドの上で愛をささやく

そうこう考えている間に、男の人の顔が、どんどん近づいてくる。


男の人との距離が縮まれば縮まるほど、意識すればするほど、薔薇の甘ったるい匂いは強くなっていく……。


まるで、わたしの頭を支配していくような、強い香り……。




「……んっ」

やだっ……何か、変な声出た。


恥ずかしい!!




あまりの恥ずかしさに、わたしは自分の髪を引っ張るのをやめて、男の人の七分丈のシャツを掴んだ。


「とても美しい」


男の人とわたしが至近距離になる。


心臓はバクバクいってるし、

胸は、締めつけられるみたいにギュッてなってる。




そして……。




ぎゅるるるるるるる。




……鳴ったのは、わたしのお腹の虫でした。




その瞬間、男の人に縛られたわたしの体は機敏(キビン)に動き、両手でお腹を押さえた。


恥ずかしい。


なんで、こういう時にお腹が鳴るの?


……って、そもそもこういう時って何!?


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