美狐はベッドの上で愛をささやく
それなのに、彼は血走った目を向け、睨(ニラ)んできた。
生前の父とは別人とも思える恐ろしい形相に、わたしは息をのんだ。
その父が、への字に曲げた口をひらく。
「どうして……だと?」
そう言う父の声は、表情と同じくらい恐ろしく、おどろおどろしい。
口からはまるで、毒でも吐いているかのような、何とも言えない、血なまぐさい匂いがした。
覆い被さってくる父を見上げながら、わたしは恐怖で何もできず、まるで体が縛り付けられたように動けない。
――本当は……こうなることを恐れていたのかもしれない。
わたしは知っている。
死した父が今、なぜ、わたしの前に現れたのかを……。
優しい父の命を縮めたのはわたし。
父は捨てられたわたしを拾ってくれたのに、恩を仇で返してしまった。
父は……わたしが……憎いんだ。