美狐はベッドの上で愛をささやく
「お父さん……」
「黙れ!!」
わたしが『父』と呼ぶと、お父さんは両手をわたしの首に絡めてきた。
そして……。
首にかけた両の手に力を加えはじめる。
「っぐ……」
いったい細い腕のどこからこんな強い力が出るのだろう。
それくらい、わたしの首は父によって締め付けられていく。
ギリギリと骨が軋む音がわたしの耳に入る。
その音を聞いているだけでも、父の怒りがどれほど大きなものなのかがわかる。
……息が……できない……。
「あ……っぐ…………」
強い力で絞められているから、息をすることはおろか、唾液さえも飲み込めず、垂れ流しになってしまう。
そんなわたしの醜い姿を見た父は、そこではじめて皺をつくって笑った。
だけど、目は相変わらず血走っている。
わたしが好きだった、皺くちゃな優しい笑顔じゃない。
「いい表情だよ、紗良。私を殺したお前を……許さない」