俺様王子と2℃の恋
 誰かに助けを求めることだって出来たと思う。周りには人ばかり。ここで大声を上げれば、私はすぐにこの地獄から助かることが出来る!

 けど……

「(私、目立つことは嫌いなの……っ!)」

 ここで助けを求めることも気弱な私には無理だし、痴漢された人だと思われるのも嫌だ! ジロジロと注目されるのが本当に嫌いなの!

「(こっちは完璧な被害者だっていうのに!)」

 だけど、声も出さない、助けも求めたくないとなれば、後は早く学校に着くことを祈るのみ。私はただ両手を合わせ、この地獄に耐えようと覚悟を決めた。

「(早く、終われ!!)」

 けど、その時だった――

 クンッ

 私の体が何かの引力によって傾く。

「へ?」

 次に私のお尻に触れたのは、バス席のシートだった。 
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