俺様王子と2℃の恋
 そう思い、何気なしに聞いてみる。

「あの、王宮さんって……」

「なに?」

「……いえ、なんでもないです」

 なぜだか、聞けなかった。私は静かに口を塞ぐ。

 別に聞いても良かったと思う……けど、これを聞くと彼の中に入り過ぎてしまう気がした。私はただ一緒にいる同級生だし、彼女でもなければ心話せる親友でもない。

 プライベートは、触れないでおくのが最善だ――

「(めんどくさいのはごめんだしね)」

 そうこうしている内に校門をくぐる。

 その瞬間、何か不穏なことを告げるようにポツリポツリと雨が降り出すのだった。
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