可愛いなんてバカらしい
教室に足を踏み入れると、クラスの騒がしさが一気に静まった。


グラウンドのボールの転がる音さえ聞こえてきそうだ。


「お、おはよー.....」


ちゃんとした格好で来るのは初めてだしなぁ。


うぅ....視線が痛い.....。


「お前......沢谷か...?」


一番最初に話しかけてきたのは、足を組んで座っていた万里。


少し髪を遊ばせていてチャラい印象の男だ。


万里はクラスで一番最初に俺に手を出してきた野郎だ。


まぁ、腹に一撃くらわせて、


「俺は男だ!!」


って言ってやったからそれ以来ちょっかいは出してこなかったが、普通に話しかけてきやがる。


「そうだ。沢谷だ。」


俺がそう言うと万里は俺のところに寄ってきた。


「お前やっぱ男だったんだなぁ。あーあ、残念♪」


こいつ、まだ俺のこと狙ってたのか?


「最初に言っただろうが。俺は男だって。」


「まぁな。いやぁ~それでも....。
しかも、口調まで俺になっちまってよぉ~。」


万里は娘を嫁に出す父親のような顔で俺を見た。


「で、どうしたんだよ。急に。」


「ま、俺にも色々あんだよ。」


こいつに言うと少々めんどくさい事になる。


噂話の発端はだいたい万里だ。


ほーら、言わんこっちゃない。


もう人が集まってきやがった。


廊下で知らない女どもが俺を撮ってる。



俺はすかさず2本の指を立ててピースする。


途端、黄色い声がクラス中に響く。


さらには違う男まで廊下に集まってる。


だから、万里に言うとめんどくさい事になるんだよ。
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