可愛いなんてバカらしい

屋上Ⅰ

ー屋上の二人ー
「沢谷くん大丈夫かなぁ....」


沢谷くんが屋上を出ていって、かれこれ10分経つ。


「ん?真琴のこと気になる?」


「へ?!いや、気になるというか心配というか....」


なんで私、口を濁すんだろう。


別に隠すほどのことでもないのに...。


そういえば、男の子と二人きりなんて久しぶりだなぁ。


ちょっと緊張する...。


あ、でも、渡辺くんはなんだか緊張というよりも和やかになるなぁ。


「あ、そうだ。」


急に渡辺くんは無邪気な笑顔を見せて話だした。


「ねぇねぇ、生徒会長さん。良いこと教えてあげよっか?」


「良いこと?」


無邪気な笑顔を消さないまま渡辺くんは話を続けた。


「今日ね、生徒会長さんを助けてくれたのは男の方の沢谷真琴だよ。口調、男の子だったでしょ?」


確かに言われてみれば.....。


でも、そうなら沢谷くんはどうして真琴ちゃんを呼びに行ったの?


意味ないんじゃ....?


「沢谷真琴ちゃんを呼びに行ったのは多分、生徒会長さんが困ってたからだと思うよ!だから、この話は内緒ね!」


「はい!沢谷くんて優しいんですねぇ!」


「そうだね。真琴は誰にでも優しいからなぁ。」


渡辺くんはまるで両親のことを話すような顔で言った。


沢谷くんのことよく分かってるんだなぁ。


私ももっと沢谷くんのこと知りたいな....。
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