可愛いなんてバカらしい
生徒会長は少し照れて、口を開いた。


「実は真琴ちゃんと仲良しの人なんだぁ。」


な、な、な、なんだとぉぉお!?


俺の知り合い!?


誰だ!?


.......海斗か?それとも万里?


う~ん、どちらかと言うと海斗かな..?


一回、屋上で二人きりにもなったし...。


あぁぁぁ、くっそぉぉお!


海斗めー!!!!!


羨ましいぜ、この野郎!!!!!


「真琴ちゃん?大丈夫?」


俺の思考回路がパチっと切れる。


「え?あ、あぁ、大丈夫、大丈夫.....うん...行こっか....あはは....」


結構なショックに足がもたつく。


「大丈夫?!なんだか、フラフラだよ!?」


今となっては、生徒会長の優しさも傷をえぐる。


「大丈夫だよ...早く仕事終わらせよう。」


俺は半泣きの顔を下に向け、三階の点検を始めた。


三階は少しホコリがかぶっていて、鼻がムズムズした。


「ハックション!」


一つ、盛大なくしゃみをして二階に降りる。


「化学実験室の前ってなんだか雰囲気あるよね....」


生徒会長はため息をついて階段を降りていった。


行きよりは怖がっていないように見える。


二階に着き、化学実験室を見ないようにしていたが、つい視界に入ってしまう。


「え.......?どうして?」


真琴は腰が抜けそうな光景を見た。


「窓が.......開いてる。」


窓はきちんと確認したはずなのに、何故か手前の窓が開いていた。


生徒会長を見ると、怖くて声も出ていない様子。


おかしい。


こんなこと起こるはずがない。


幽霊を信じていない俺にとってはこの現象は不思議でしかない。


「誰かいるのかな...?」


俺は開いている窓にゆっくり近づいた。


教室をのぞいてみると、怪しい人影が一つ。


「誰だ!」


俺が声をかけると、人影は驚いて肩が揺れた。


「す、すいません!」


あれ?この声......。


「海斗?」


「え?.........真琴?」


人影の正体は海斗だった。


「お前、なーにやってんだよ。」


俺は呆れたように海斗に挙動不審な理由を尋ねた。


「え?あー.......ちょっと忘れ物を...」


目が泳いでいる。


「忘れ物ってなんだよ。」


海斗はスッと手を後ろに回した。


何か隠したな?


「なんだよ、見せろ...よ!」


俺は海斗の手から一冊の本を取り上げた。


「......てめぇ、学校に何持ってきてんだよ!」


本のタイトルは"エロ補給"


学校にエロ本かよ、ガキか。


海斗は俺の手から本をもぎ取り、大事そうに抱えた。


「おめぇが最近、生徒会で忙しいから俺、帰り道寂しいんだぞ!」


「関係ねぇだろーが。話変えんな!はい、取り上げた。」


再び海斗の手から本をもぎ取り、没収する。


「俺が家でしっかり預かっとくよ♪」


カバンの中に本をなおし、北館を出る。


「俺の2000円.....」


海斗は悲しそうに下を向き、後ろをついてくる。


「真琴ちゃん、本持ってかえるの?」


「え?あー、いや生徒会で没収するよ♪」


生徒会長は何故かホッとした表情をした。


「良かった!女の子なのにエッチな本持ってかえってどうするのかと思っちゃった。」


生徒会長は無邪気な笑顔を見せて、本を預かった。


「でも、真琴ちゃん、普段は自分のこと「私」って言うけど、渡辺くんの前では「俺」って言うんだね。」


生徒会長は不思議そうな顔をして言った。


「え?あぁ~、海斗は特別だからね♪」


「仲良しなんだね!なんだか、渡辺くんと話してる真琴ちゃん、男の子みたいだね!」


いや、男なんだけどね。


うーん、正直に言うか?


でも、この前も言ったけど、信じてもらえなかったしな........。


それに女の子として話しかけた方が好きな人とか聞きだせるし........。


よし、ひとまず、男なのは隠そう。
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