可愛いなんてバカらしい
.......え?


俺の聞き間違いだろうか。


いや、違う。


生徒会長ははっきり言った。


他に気になる奴がいる?


はぁ?じゃあ、今のキスはなんだっただよ。


「.....私.....も好きなんです.....」


フラれちまうのか俺....。


.......え?


私「も」好きなんです?


「え?」


「気になる人っていうのが....その.....沢谷くん....なんです....」


生徒会長は真っ赤な頬をあげ、俺を見上げる。


上目遣いで少し涙目の瞳は俺を吸い込む。


なんて綺麗な目なんだろう。


こんなの惚れない奴なんていないよなぁ。


俺って本当に幸せな男だと思う。


もう言っていいかな。


俺の欲望を言っていいかな。


生徒会長.......好きだ。


「俺さ、生徒会長が好きだ。だから、付き合って下さい!」


勇気を出して、生徒会長に伝えた。


心臓はどんどん速くなり、騒音のように俺の鼓膜を揺らす。


生徒会長はぼっと顔が赤くなった。


そして、一歩下がり頭を深々と下げた。


「お、お、お、お願いします!」


そんな姿になんだか笑えて、俺はぎゅっと抱きしめた。


心地よくて暖かい。


太陽の温もりとはまた違った暖かさ。


でも、心の芯まで暖かくなる。


「生徒会長......好きだ。」


「私もです.....」


太陽の光を背景に二人は見つめあった。


そして、それが自然なことのように再び唇が重なった。




ラベンダーの香りがした。
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