AM1:30
修学旅行明けなんだから当然と言えば当然で、どの授業も最初に必ず先生が沖縄の思い出話をみんなに振った。



スカイダイビングをした話だの、ホテルのバイキングが美味かった話だの、みんな楽しそうにしている。



そんな中、隣の席の柊だけはむすっと不貞腐れていた。



朝からずっと何も喋らず、机にだらしなく突っ伏して、横目で私を睨んでくる。



「柊もスカイダイビングしたの?」

聞いてみたものの、肯定も否定もせずにただ睨みつけてくる。


気にしないつもりでいても、さすがに居心地が悪い。



「なに?なんかあったの?」


「…お前最初っから……やろ」


声が小さすぎて聞こえない。


「うん?何?」


「お前最初っから来ないつもりだったんやろ!」

もう一度聞くと、今度は怒鳴るような声が返ってきた。



「ん?来ないって何が?」

「修学旅行に決まっとるだろ馬鹿。」


どうやらこいつは、私が修学旅行に参加しなかったことを怒っているらしい。


なぜ?why?


さっぱり意味が分からない。


「何怒ってんの。それに体調不良で行けなくなったんだって。最初っから行かないつもりなわけないでしょ。沖縄だよ?行きたいに決まってんじゃん。」


楽しかった?と尋ねると、ふいっと横を向かれてしまった。



「お前なんで俺に嘘つくん。」

低い声がボソボソ聞こえてくる。



なんでこいつはこんなに怒ってるんだ。

修学旅行で嫌なことでもあったのかな。



後でさやかに聞いてみようと思いながら、不貞腐れた柊クンを宥めるのは諦めた。
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