AM1:30
中には4人の女子がいた。

全員3年生だろう。1人も見た事がない顔ばかりだ。



「誰?」


素直に聞いてみたら、真ん中にいた女子が眉を潜めた。



「知らないの?あたしのこと。」

そんなこと言われても。


「知りませんけど。」


ありえねーっと周りの女子が騒ぎ出した。



「あたし、柊くんの彼女なんだけど。」


「は?」



突然の言葉に、改めて彼女を見た。


髪は長く、とても美人とは言えないけどスタイルはいい。


胸が…でかいな。うん。




「聞いてる?!」

「え?あぁはい。」



彼女ってなんだよ。

また菜々子みたいな妄想か?



よく分からなくてとりあえず話を聞くことにした。



「あんた最近柊くんの周りうろついてるみたいじゃん。休み時間もずっと一緒にいるらしいけど。あたしが彼女なの分かっててやってんの?」


「えーっと…本当に彼女なんですか?」


「はぁ?当たり前でしょ。付き合ってるから。柊くんと。」


「いつからですか?」


「6月からだよ!」


「………それは、マジな話ですか?」


「だからマジだっつってんだろ!」



キレだした様子を見るに、本当のことらしい。



6月といえば、私と付き合うより前ってことになる。




頭が混乱していた。



「で?あたしに喧嘩売ってんの?」

いきなり詰めよられたけれど、迫力はあまりない。


「あの、リボン掴むのやめてください。」


「は!?ふざけてるよこいつ!」


二人が私を押さえ付け、身動きができなくなった。



「あんたが付き合ってるとか知らないし、あんたのこと知らないんだから喧嘩売るもなにも。今初めて存在を知ったんで。」



悪いけど私も腹が立ってきている。


考慮した言い方なんてできない。



「あぁそう。だったら忠告しておいてあげる。」


ポケットからハサミを取り出した彼女は、私の髪を掴んだ。


「柊くんにこれ以上ちょっかいかけるなら」


ジョキンと音がして、ワンレンだった髪が耳の横で切られたのが分かった。


「次は後ろも切ってあげる」


再びジョキンと音がして、もうひと束、床にハラリと落ちていった。



「なにすんだよふざけんな!」


掴みかかろうとして、思い切り鳩尾を蹴られた。


「う…」

「誰かに言ったら殺すよ」



蹲った私を嘲笑い、音楽室を出て行った。



悔しい。でもそれ以上に、信じられなかった。



大地が二股?そんな素振り、一切無かった。



大地が私に好きだと言ったあの時の目に、嘘は見えなかった。



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