AM1:30
10分後、大地は1人で帰って来た。


手には何も持っていない。


「あれ?チョコもらったんじゃなかったの?」


「好きでもないやつからチョコレートなんかもらうかよ。」




なぜか怒ったようにそう言って、ぷいっと横を向いてしまった。





でも今日1日で、私は大地のモテ男ぶりを盛大に見せつけられることになった。





朝はあれだけだった呼び出しが、休み時間には殺到した。



大地が教室から連れ出されたと思ったら、次の女子がやってくる。


「柊くんは?どこ行った?」

「さっき出てったけど。」


「えー!んーじゃあちょっと待ってよう!」

すぐそばで待機されて、かなり迷惑だった。


教室で直接告白している女子もいた。菜々子ももちろんやってきた。


「柊くんのこと、好きなの。その、手紙入ってるから…」


目の前で告白されている大地を隣で眺めるのはなかなか面白い光景だった。


「俺チョコレートとかもらわんことにしとるから。ごめんな。」


あっさりとそれを突き返し、断る姿はなかなか潔い。


泣く泣く持ち帰る女子たちとは違い、

「貰ってくれるだけでいいから!」


菜々子はそれを机に置いて走り去った。




「…いらねーっつっとんのに。」


迷惑そうにピンクの包みを手に取り、すぐそこにいた男子に渡している。



「モテる男は辛いねぇ?」

冗談まじりにこっちを見てくる大地に、私は素直に頷いた。


「ほんとにモテるんだね。知らなかった。」


「お前はくれんのか?」

「あげたって他の男子に渡されたら意味ないでしょ。」

笑ってやった。


「よみがくれたのんは絶対誰にもやらん。」

「……そういうこと言うからモテるんだろうね。」

「違うって。今のはほんま。俺は好きな女からのチョコ以外はもらわんことにしとんや。」

「……好きな女ね…」




先輩からのチョコレートは貰うんだろうな。


もうどうでもいいのに、胸がぎゅっと痛くなった。

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