Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
プロのアドバイスもあって、桃花を大型バイクで送る事にした。
オレと密着することで安全性が増すし、何より時間短縮という理由がある。
今日は、ヴァルヌスから本物の雅幸が来日(帰国)する日だ。入れ替わりの条件で、安全が確保されるまではこのままでいられる。
(雅幸も対策を講じてはいるだろう。抜け目ないヤツだからな)
そう考えている最中に、噂をすればなんとやらではないが、当の本人から連絡が来た。
『やっほー、やっほ~! 元気してるぅ?』
二十歳をとうに過ぎているにもかかわらず、雅幸(本物)は相変わらずふざけたような態度を取るが。
「ああ、まあまあだな」
『う~ん、そっかぁ。桃花ちゃん相手に苦戦中か~やっぱ、バカのせいだよね?』
バカ、は敵対する存在がある時の暗号。秘匿通信で傍受や盗聴の危険性は排除しているが、どこで聞かれるかわからない以上用心に越したことはない。
「やはりそちらもバカがいるのか?」
『うん、いるよ~ぼく(高宮)と親(葛城)相手に遊ぼう(脅迫)っていうバカがね。ま、準備万端だから、何にも心配いらないよ。どんなお遊戯にも付き合えるようにしたから』
「マリアも、か?」
『うん~マリアはお遊戯が得意だからね。どうやって遊ぼうかわくわくしてるよ。家(別荘のあるヴァルヌスとオーストリア)では、散々遊びたおしたらしいから』
流石だな、と苦笑いするしかない。マリアも妬まれ狙われやすい立場ゆえに、様々な修羅場を潜り抜けてきたんだろう。
『うちからも親からも、お遊戯の道具(対策)はたくさん送られてきてるからね。今日はすごく楽しいと思うよ』
「ああ、確かに楽しみだな。疲れるから今日1日で終わるといいな」
『きっと大丈夫だよ。じゃあね~』
今日……絶対に決着を着ける。バイク用のスーツに身を包み、桃花よりも先にマンションを出た。