Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
桃花を無事にスーパーに送った後、侍従長のアルベルトから連絡が入った。
『狙撃手は身柄を拘束できたそうです』
「わかった。やはり……この程度の作戦に引っ掛かる程度では、プロとして二流だな」
『……あなたの予想通りでしたね』
そうだ。今回の件は単なる脅しで、刺客はトカゲの尻尾切りのようにいとも簡単に捨てられた。ならば、大した情報は期待出来ないだろう。依頼だとて足がつかない無関係な人間がしたに違いない。
(だが、完全に接触の痕跡を消すなど不可能。舐めてもらっては困るさ)
そのための指示をしようと携帯電話を開いた時、警察署の阿倍野警部からある知らせがもたらされた。
狙撃手がただひと言、オレに伝えたいとした内容。それは――
“水科 桃花をヴァルヌスへ迎えるならば、彼女はその日から永遠に日の目を見ないことになるだろう”
何てことはない。狙撃手はメッセンジャーとしての役割が最大の目的だったのだ。
桃花をヴァルヌスへ――王家へ迎え入れることは許さない。一番恐れていた反勢力の警告に、顔が強張る自覚があった。
確かに、ヴァルヌスだけでない。近隣の国では移民に反対する動きが活発化している。移民の流入で明らかに治安が悪化し、ダメージを受けている。父王子に続けて異国から妃を迎え入れるとなれば、移民の象徴として祭り上げられる可能性もないとは言いきれないからか。
(……それこそ時代錯誤もいいところだ。同じ世界に生きる同じ人間。国という枠になんの意味がある)
だが、実際にはかなり根深い問題だ。その勢力を排除するには、今のオレにはあまりに非力だ。
(ヴァルヌスで戦うしかない。桃花を無事に迎えるためにも)
時間がかかるだろうが、実力をつけきっと勝ってみせる。そう、決意をした。