Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
全体朝礼に間に合う程度に遅れて職場に行けば、予定通りに本物の雅幸はこの支店への視察に来ていた。
相変わらずのテンションの高さには辟易する。頼むから「カイ王子」にこれ以上変なイメージをつけないでくれ。
そして熊田店長の口から、昨日のロッカー事件と以前の監禁事件がようやく公表された。
案の定大谷が被害妄想だの何だのと言い始め、夫のフロア長を巻き込んで“自己責任”という空気が広がりつつある中で。オレはチクリと言ってやった。
「……へえ、オカシイね。なんで残業してる最中に閉じ込められたって、アンタが知ってるの?」
大谷が顔を赤らめて何か喚いているが、くだらないと鼻で笑ってやる。
「ま、オレのことはどうでもいいけどさ。やっちまったヤツは早めに名乗り出た方がいいんじゃないの? 既に被害届は正式に受理された。事件として警察が動き始めてる。 少なくとも傷害罪と器物破損、それから監禁罪だかに問われるだろうね」
オレによる援護が効いたのか、ずっと黙ったままだった桃花が何かを決意する強い眼差しへと変わる。震える手を握りしめると、大谷を見ながら口を開いた。
「そ、そうです。あの時……閉じ込められたもう一人は私です。やった方は正直に申し出てください!今のうちなら被害届を取り下げる意思はありますから」
やっと、大きな一歩を踏み出せた。今まで抗えなかった桃花が、自ら戦う意思を持ったのだ。大谷と対等に言い合い、味方だって手にしている。彼女はもう、大丈夫だろう。
フッと口元がほころんだ……のを見た雅幸に、後から散々からかわれたのは言うまでもない。