Schneehase~雪うさぎ 身代わり王子にご用心番外編



知らず知らずのうちに、引き寄せられた。


目、だけじゃない。意識や感覚の全てが。


ガラス越しにでも、はっきりと見える。生き生きとした活発な彼女の笑顔が。


“生きている喜び”を全身で表した少女の一挙一動が気になって、その動きや仕草をすべて目で追っていた。


すると、どうだろう。


急にサンルームの中の色彩が色褪せて見えた。


(ここは、つまらない)


今まで花を見てそんなふうに思ったことなど無いのに、外で遊ぶ子ども達を見てしまえば。どんなに綺麗な花も存在が霞んでしまって。私の心はひたすら外へ向いている。


奈美がいくら話しかけて来ようとも、幼すぎた私は気を遣うこともなく。ただ外への憧れを隠そうともしない。


やがて、先ほどの少女が再び私に目を向けた瞬間――小さく心臓が跳ねた。


彼女はにっこりと笑ってサンルームに近づいてくると、庭に積もった大量の雪で何かを作り出した。


丸めた雪だまを雪の上で転がすと、だんだんと大きくなるのだと初めて知った。それは大きなたまと小さなたまになり、そのふたつをくっつけて何やら作る。


上に重ねた小さなたまに黒い目や口が描かれ、両手に見立てた枝に手袋を被せたそれが。初めて間近に見た雪だるまというもので。


手袋を脱いで寒いだろうに、赤い頬をしながら彼女はニコニコと笑ってくれた。


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