Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
素直になって
桃花は何を言っているのかわからない、といった顔をしていた。急な展開と唐突な質問に、対処しきれてないんだろう。
それはそうだ。今までオレの妨害で桃花へキスをするような勇敢な男など現れなかった。オレだとて鬼じゃない。本気で、命や未来を桃花へ賭けられるほどの覚悟を持った男ならば近づくのを許した。
だが、どの男もそんな勇気を持たなかった。思春期特有の浮わついた気持ちや、軽い思いばかりで。後に桃花が泣くのは目に見えていたから、許すはずもない。その証拠に、警告を受けて数ヶ月で違う女を好きになるような男ばかり。一途に桃花を思うような硬派な男は皆無だった。
はっきり言えば、桜花に近づく目的の男も多かった。姉を踏み台にして妹にアピールしようなど、その腐った狙いにヘドが出る。
利用され捨てられるだけなどと、このオレに対する挑戦だと受け取り、徹底的に妨害してやった。
だからこそ、桃花は自分が一度も異性にモテたことがないと思い込む。本当のことを知って傷つくのと、偽りを現実と思い込む方とどちらが幸せなのだろう?
けれど、伝えずともいいことはある。妹への深い劣等感や疎外感を長年感じてきた桃花には、本当の想いを吐き出させる時間が必要だ。
自分を解放し、よい部分も悪い部分も自分だと。自分を形づくるものだと認めさせる。
人は清いままではいられない。光に影があるように、陰影があってこその人間。それを、きちんと認め受け入れろ。清濁併せ持つきみだから、オレは受け入れるんだ。