Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
どれだけの時間が経ったのだろう。
“いい妹”のために“いい姉”であろうとした桃花には、その仮面が偽りと気づくのも苦労しただろう。自分をごまかして無理に演じ続けた結果、本当の自分を見失い解らなくなっていただろう。
そして、ようやく桃花の口から言葉が吐き出された。
「……わたし、はっ……」
桃花はきつく閉じたまぶたの上に、両手を乗せる。そのまま震える手で顔を覆うと、微かに嗚咽を漏らした。
「桜花が……羨ましかった……」
「……ああ」
相づちを打つだけで、喋りたいように喋らせる。桃花の口から語られたのは、妹への本当の気持ち。嘘偽りない本音を語り、聞かせてくれたという事実に暗い喜びを感じた。
(どんなことでもオレに言ってくれ。オレは知りたい、きみが何を思っていたのか……そして、オレを知って欲しい)
“自分が一番嫌い、大っ嫌い!”
そう言い切って震えながら涙を流す桃花へ、いとおしさが増して抱きしめたくなる。それだけ追い詰められていたのに、桃花は自分が傷ついていると気付いてなかった。いや、気付こうともしなかった。
自分をさらけ出したなら、次はもっと勇気を出せという意味で言い放つ。
「自分から、キスをしてみろ」――と、彼女を挑発した。