Schneehase~雪うさぎ 身代わり王子にご用心番外編



「そんなの……で、できない」
「なぜだ?」

「な……なぜッて」


桃花は頬を赤らめてうつむいたまま、組んだ両手をモジモジと動かす。彼女にすれば恥ずかしさから無意識にした仕草だろうが、オレからすれば誘っているとしか思えない。

押し倒したくなる衝動と戦いながら、冷静さを保ち彼女に問いかけた。


「変わりたいなら、勇気を持て。自分の殻を破りたいなら、思い切ったことをする必要がある。やってみれば“案外こんなもの”と思うだろう。それが弾みになる」


今まで散々挑発的な事を言っておきながら、どの面下げて好きでもない男にキスをしろなどと言える?


彼女が躊躇う理由など解りきってはいても、あえてこちらからは動かない。彼女が殻を破る勇気を持って初めて何もかもが始まる。


桃花が自ら動くまで、何時間でも待つ覚悟はあった。だが、予想より早く彼女は行動をした。


ぎこちない、触れるだけのキス。耳まで赤くしながら、小さく震えこちらへ触れてくる。ギュッと目を固くつぶり、真っ赤になる様子がいとおしい。


もう一度、と二度繰り返され三度目に唇が触れた時に、理性が焼ききれた。


「……アンタの方から、誘った」


馬鹿みたいな理由をこじつけて、桃花の顎を掴み噛みつくようなキスをした。


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