Schneehase~雪うさぎ 身代わり王子にご用心番外編



「……アンタは、変われる」


そう、きみは勇気を持てた。オレを信じて変わろうとしてくれた。それだけで大きな前進なのだ、と伝えたい。


「変わろうという意思が、あるなら。自分が最低で嫌いなら、少しずつ上向きになればいい。そうすれば、いつか好きになれる」


直に桃花の肌に触れて感じた心音は、とくとくと小さく鳴いていた。緊張からか――それとも、オレを意識してくれているからか?


少なくとも、キスは拒まない。オレに微かにでも好意を抱いているのだと、そう信じていいのだろうか?


オレは視線で桃花に問いかけていた。無理にことを進めるつもりはなく、彼女が少しでも迷ったり躊躇いを見せたら、すぐにでも止めるつもりはあった。


理性などとうに無くなる寸前ではあったが、彼女の未来を考えて踏みとどまる。


今からオレがしようとしていること――それは。桃花の今後の人生に影響を与えかねない出来事が起きる可能性はある。


避妊はきちんとするが、懐妊の可能性はゼロではない。もしも桃花が私の子を身籠ったなら、ヴァルヌス王室とは無関係ではいられなくなる。


当然、桃花が抱いた初めての夢を諦めさせるという結果にもなりうるものだ。


カイ個人としては彼女が手に入るならば、懐妊はむしろ大歓迎したい。どんな手段を使ってもあなたが欲しかったのが本音だから。


だが……王子としては、そうもいかない。将来の王位継承者となる子どもを、そう軽々しく作る訳にはいかないのだ。やはり一番ベストな方法は、正式に結婚してからだろう。誰もが認める継承者として、きちんと祝福される形で生んでやりたい。


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