Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
次第に馴染んできたのか、桃花の表情が和らぐ。彼女が落ち着いたとしても、やはり痛みや苦しみは免れまい。それでも、今はきみが欲しいのだという私はきっと愚かなのだろう。
永遠に繋がっていたいなどと願っていても、所詮はかなわない。ならば、きみの中に私を刻みつけていく。そのために、今一時を幸せにしてやりたい。
「……動くぞ」
桃花に言いおいてから、本当にゆっくり、ゆっくりと。じれったいほどに労りながらに動き始める。つらくはないか?と彼女の表情を見守りながらも、あちこちにキスをして手のひらで頬を撫でる。
「カ……カイッ」
おそらく、今が一番つらい時だろう。私の名を呼んですがりついてきた、その事実に胸が熱くなってキスを落とした。
「桃花……っ」
「……ああ!」
カイ、と潤んだ瞳で呼ばれて、限界が近づいてくる。幸せに酔う、蕩けそうな幸福を初めて感じた。
桃花も、同じでいてくれただろうか?
ただ、わかったのは。彼女が涙を浮かべながらも、私を受け入れ微笑んでくれたこと。
“好き”――。
妄想や勘違いでなければ、その茶色い瞳でハッキリとそう告げてくれていた。
私も、だ。きっと、ずっと、もっと、前から。
あの雪の日。きみが雪うさぎをくれた瞬間から――
恋に、落ちてた。
「桃花……覚悟があるなら、私の子を……」
私の子どもを、ヴァルヌスの将来を担う子どもを産み、ともに育んで欲しい。それができるのは、きみしかいない。
私が選んだ、あなただから――