Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
ようやくドアが開いて侍従が出ていった隙をつき、護衛の手を思いっきり噛んで外に飛び出す。
奈美の体に力一杯ぶつかっていったものの、怯ませた程度で止めきれない。体が小さすぎて、力が無さすぎて。少女の足を踏む奈美の足にしがみつくしかなかった。
奈美が私に意識を向けた間に、侍従の手で少女は救い出された。乳母の指示で毛布にくるまれ、村田家の部屋へ運ばれる。
乳母は看護師の資格を持っていたから、彼女の指示で適切な処置がなされた。
少女はひどい肺炎を起こした上に、潰れた指の骨が何本か折れていたという。あまりに酷い仕打ちに、私は奈美への憎しみが湧いた。
“お願いします。友達になれそうな子だったのです。何とか助けてあげてください”
私は母上に必死に願った。ただ私を喜ばせようとしてくれただけなのに、どうしてあんな目に遭わねばならないのか。を切々と訴える。
もともと母上は情が厚い女性。自分の息子と幾らも違わない年の少女が、息子が原因でひどい怪我を負ったというなら。放っておけなどしない。
私の予想通りに母上は実家の高宮のみならず、姻戚関係にある葛城の伝で外科の国際的権威の医師を招聘。肺炎の治癒待って少女の手術が行われた。