Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
『28日、Uスーパーの催事場に来てくれ』
突然の連絡をくれたのは、高校時代の部活の先輩だった。外務省から大使館を通じて寄越されたその電話は、外交官をされてる先輩の親御さんと関係があったのかもしれない。
『唐突だが、親父の了承は得ている。ヴァルヌス本国にも既に、警備計画の見直しや交通ルートに関する情報は伝えてある。大使と外務省に関してはこれからだが』
「また、いつもながら突然ですね。春日先輩」
年齢的には1つだけだが、学年は2つ上の春日先輩は、奇妙キテレツという言葉がよく似合う。突然の行動や始まる会話に振り回されたのは、いったい何度あっただろう。
『そうかもしれんが、マリアと雅幸につつかれたからな。あと、おまえの作品を意中の君に見せてやれと』
「古いですよ、先輩……」
昭和めいた言葉選びが好きな先輩だが、本当に必要だと認めたことにしか動かない。私が桃花を想っていたのだと、あの中学時代の合宿で先輩にだけはバレていた。それに関しては何のアドバイスもくれないが、否定もしない。ただあるがままで良いではないか――と。映像を制作する時にいってくれた。
そう、そして生まれたのが雪うさぎ。ドイツ語で付けたタイトルは、桃花へのメッセージが込められていた。
彼女を想いながら、彼女に向けての感情の全てを詰め込んだ。たぶん、他人から見ればただの心暖まる作品にしか見えないだろうが、あの雪の日を憶えているなら。きっと、伝わるのだろう。
そう願いながら、冷たい雪をうさぎにして命を吹き込んだ。
アニメーションという、映像のマジックで。