Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
『いいですか、30分だけですよ。それ以上は誤魔化しが利きませんから』
異国の女と密会するのを、侍従長のアルベルトは最後まで猛反対していた。彼が渋々ながらも了承したのは、マリアが自分と逢うと無理やり予定をねじ込んできたからだ。
マリアと会うついでに桃花に逢う、と知った時のアルベルトは、苦虫を百匹は噛み潰したような渋面で。正直、笑いを堪えるのが大変だった。
不意打ちなのは認めるが、事前に知らせたら絶対に阻止してきただろう。アルベルトは私がどう説明しようが、言葉を尽くそうが桃花を迎え入れることに猛反対している。
ある程度時間が経てば粘り勝ちできそうなものなのだが、彼に関しては一筋縄ではいかない。何せ留学を始めて以来約10年、桃花との接触を拒んできた彼だ。頑固で融通のきかなさは筋金入り。
もしかすると桃花を迎え入れるので一番の難敵は、たぬきジジイよりアルベルトかもしれない。