Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
ずっとずっと桃花を見守りたかった。
だけど……時間が、立場が許してくれない。
1ヶ月だけは滞在の許可を下さった祖父の国王陛下も。父上もそれ以上は、と帰国を促してきた。
(……せめて……目がさめるまではいたかったのに)
まだ3歳児でわがままを言ってもいい年頃ではあっても、ほんの微かに芽生えた王族の自覚がそれを押し留める。
母上が毎晩夫に国際電話を掛けて気にかけていらっしゃるのは知っていたし、父上がだんだんと健康を損ねていたのを聞いていた。
だから、国王陛下の勅命で強制的に帰国を促されたとき。それ以上は無理だ、と後ろ髪を引かれる思いで日本を経った。
今年中にまた桃花に会いに来よう、と胸に秘めながら。
けれど、それはすぐに叶わなかった。
父上の病が思ったよりも重くて、病床に伏してしまう闘病生活を始められたから。母上が付きっきりで夫の看病をされて、とても日本への帰郷など提案できやしない。
意識が戻った桃花は3月の末に無事に退院し、春に小学生になったのだと聞いた。4月には私も4つになる。そんな私に、祖父から王位継承者としての自覚を持つよう諭され、急に学ぶべき内容が増えていく。
たぶん、祖父も覚悟をしていたのだと思う。息子の余命が幾ばくもない、という現実を。