Schneehase~雪うさぎ 身代わり王子にご用心番外編



そこまで話して漸く納得したのか、アルベルトの顔が少し落ち着く。


『ですが。いずれにせよ、わたくしが落ち着くのはあなた様のご成婚を見守ってからです』

『公爵から縁談を命じられても、断るのか?』

『わたくしには6人の兄弟がいます。わたくしが子をもうけずとも、公爵家の跡取りの心配は要りませんから』


アルベルトは何の淀みもなく、サラリと“自分は結婚の必要なし”と遠回しに伝えてきた。


彼が話す通りに公爵夫妻は見合い結婚ではあるが、その割には仲がいい。公爵自身も愛妻家として知られてる。その睦まじさを示すように、夫妻には3人の息子と3人の娘が生まれている。


だが、アルベルトはそういった幸せな結婚生活を見て育ったのに、なぜか女性に対してまるで興味がない。私が知る限りでは、恋人の1人もいなかった。もしかすると、初恋すらまだかもしれない。


そんな堅物相手に、恋愛がどれだけ素晴らしいかを聞かせたところで無駄。やはりこういったものは、実際に経験しないとわからない。


もしもアルベルトが最愛の女性を見つけることができたら。きっと、私の感情を理解してくれるだろう。本当に愛しくて欲しい女性がいたなら、理性など何も役に立たず、自分がどれだけ欲深く醜いものかを。


そして、同時に。彼女がいてくれれば世界は光に満ち、どれだけ力と勇気を与えてくれるのかを。


そのひとでなければいけない、という唯一無二の存在。すべての幸せも苦しみも彼女次第だということを。


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