Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
まったく、母上のおっしゃる通りで私の立つ瀬がない。
「母上の懸念はそのまま的中していました」
「まあ……」
「ですが。最後の最後で勇気を振り絞ることが出来ましたよ。ここで言わねば後がない、と。自分を奮い立たせるのがあれだけ難しかったのは、後にも先にもあれだけでした」
周りから散々けしかけられてもなかなか行動にも移せず、ヘタレ王子なんて有り難くない称号までいただいてしまった。無論、命名は辛辣なマリアだ。
そんな汚名を返上すべく、なけなしの勇気を振り絞って告白した。
「あなたは、やっぱり父上の若いころに似てるわ。外見だけでなく性格も」
母上の瞳には、昔を懐かしむ気持ちと私を慈しむやさしい光が湛えられていた。
「あなたの父上も、照れ屋な上に口下手で。なかなかご自分の気持ちを口になさらなかったの。思いやり深いゆえに、不器用な方だったわ。
必要な言葉もなかなか口にしなくて、わたくしも不安になった時もある。
でも、それだからたまに聞く言葉に重みがあったの。
心底思って溢れだす言葉は、人の心を揺さぶるものよ。
だから。あなたが真に彼女を愛しく想って告げたなら、きっと彼女には伝わっているわ」