Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
「富士美からの連絡では桃花について全く情報がないが、レストランへのスカウトはしているんだよな?」
『うん。マリアが聞いてる……って言うか話させたんだけどね~』
マリア……あの世界的デザイナーの富士美でさえ、有無を言わせず吐かせるとか。どれだけ恐ろしいんだ。微笑みながら相手を追い詰める彼女のやり方など容易に想像出来るから、あえて考えないようにした。
『富士美さんのレストランか~ぼくも行ってみたいけど~残業があるしな~』
雅幸が私との連絡で残業という時は、仕事上のではない。余分な仕事=妨害があった、ということだ。
「……なるほど」
桃花の周りがまたきな臭くなってきているというのか? 私がヴァルヌスに帰国しても彼女を狙うとは。シュトラウス公爵もつくづく粘着質なたちらしい。
『まあ、マリア(のセキュリティサービス)と、おっちゃん(SP)がばっちりお手伝い(護衛)してるけどさ~桃花ちゃんには知られないようにね』
「……そうか」
雅幸の言い様からすれば、おそらくヤツラはまだ多少ちょっかいを出す程度だ。だが、私に伝わる前提で敢えて目立つように動く――よほどこちらを挑発したいらしいが、それに素直に乗るほど馬鹿なつもりはない。
(やれやれ、桃花が私のウィークポイントと知ってから、嬉々としてつつきだしたか)
雅幸とマリア加えて、富士美と桂木、そして警察庁のツテもある。桃花は何重にも護られていてはいるが、やはりそばにいない以上安心しきれない。
雅幸達を信頼しないという訳ではないが、この手で護りたいという強い想いはいつでも燻っている。