Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
バーク卿とはビジネスランチの約束をしてある。準備万端ではあったが、念には念を入れておくに越したことはない。彼への手土産をより万全なものにしなければ。
今日は朝からマスコミの取材がメインで入っている。ヴァルヌスでは国営放送の他に、民間の放送会社が幾つかある。さほど広くない国土ゆえか、日本のように県ごとのローカル放送はあまりない。
今朝は国営放送のテレビ局が私の1日を取材したいとの希望だった。つまり密着取材というものだ。この時期に都合が良すぎる展開だが、おそらくアルベルト辺りが仕組んだことだろう。
それに、近ごろは私もメディアの露出をあえて増やしていた。将来の王太子として諸外国や国民に広く知ってもらい、認知度を上げておくのも悪くはない。 人となりが知られ、相応しい人間と認められれば即位もスムーズにいく。
それから、私にはもうひとつ大きな目的があってマスコミに近づいた。
今や移動型のデバイスで世界中どこにいても気軽にひと言を投稿したり、写真を晒せるようになった。それだけに話題になれば影響もあるが、やはり民間人とマスコミとでは影響力が桁違いだ。インターネットのみならず、テレビやラジオ放送、雑誌に新聞等の昔ながらの媒体は無視できない。
数多あるマスメディアの中で、私は捜していた。バーク卿のような気骨あふれる人間を。間違ったシュトラウス公爵の発言へ、是でなく否と言えるジャーナリストを。
そんなジャーナリストの協力を得られれば、バーク卿の懐柔も上手くいくだろう。手土産のひとつがそれなのだから。