Schneehase~雪うさぎ 身代わり王子にご用心番外編



アルベルトは黙ってタブレット端末を差し出してくる。こんな時にわざわざ訊ねるのも野暮だから、受け取って液晶画面を眺めた。


表示されているのはよくあるゴシップネタを売りにしているウェブサイト。巨大掲示板を纏めた内容だったり、速報を載せたりしていた。


匿名をかさに着てやりたい放題な連中は好きでない。日本にいた時も数字がつく有名な巨大掲示板は、全く閲覧しなかった。中学の時に見て嫌悪感を抱き、以来利用などしていない。


だが、今やネットは無視できない存在。匿名ゆえのメリットで、内部告発も容易くなった。

無論、あることないことを好き放題書く無責任な人間はどこにでもいる。今や“火の無いところに煙は立たない”等とは、死語になりつつあると言える。


だが、いくらツールが発達しようが、所詮使うのは人間。根本的な部分は何も変わらない。


インターネットと革新的なデバイスで劇的に変化したように見える生活も、本質は何一つ変わりはしないのだ。


今まさに、それが当てはまる情報が私にもたらされようとしている。


アルベルトが探し当てた記事は本当に小さくて、誰もがスルーしそうな平凡などこにでもある内容だった。地方で起きたさほど衝撃的でない事件など、地元出身でもない限り意図的には見ないだろう、


だが、私には十分有用な情報だった。


「……アルベルト、これについて今から調査を。それから警察庁にも連絡を入れておいてくれ」

「そうおっしゃると思いまして、既に手配はしてあります」

「そうか」


さすが有能な侍従長だと感心しながら、より詳細な情報を得るべくその土地について調べ始めた。


< 182 / 391 >

この作品をシェア

pagetop