Schneehase~雪うさぎ 身代わり王子にご用心番外編






そして夏の間だけ滞在する離宮に遊びに来たのが、近くに別荘を持つオーストリア人のハイドリヒ夫妻。


もとはオーストリア伯爵という貴族の家系だけあり、ハプスブルク帝国時代のよしみでヴァルヌス王国の王室とも縁が深い。 それゆえに、母上が異国から嫁がれた際には夫人が母上の友人となり、あれこれ助けて支えて下さった。


何かと非難をされがちな異国の妃は、ハイドリヒ夫妻の援護があってずいぶんと心強かったに違いない。


そんな縁もあって、私が夫妻と親しくなるように。夫妻の娘のマリアと遊ぶのは自然の流れで。何かと勉強勉強だった私を、マリアは理由をつけては強引に外に連れ出した。


あの頃からマリアはハッキリと自分を持ち、揺るぎない信念を持っていた。年上とはいえ、ずいぶん大人びたしっかりした考えを持ち、それに沿った行動を取る。一本筋が通ったそれは、大人も感嘆させるもので。


私が知るどの令嬢よりも将来性があったと思う。


けれど、確かにマリアは美人になりそうな整った顔だちをしてはいたけれど。私にはすごすぎて、性別を超えた一人の尊敬すべき相手。という認識しか持てない。


そして、マリアもあくまでも私を手のかかる弟だ、とハッキリ言った。両親の前で。


身分血筋でマリアを私の妃に、とハイドリヒだけでなく、私の両親も考えていたのは知っていた。それは政略だけでなく、私たちのことを考えてのこと。


けれど、私が5つの夏に日本から従兄弟の雅幸が来たことで全てが崩れた。マリアがへらへらした子どもの雅幸に一目惚れし、将来は絶対彼と結婚する! と宣言したのだから。


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