Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
バーク卿の父は貴族ではなかったものの、そこそこの成功を収めた実業家でもあった。代々の地主で、地主の名士。バーク卿はそれなりに幸福な子ども時代を海沿いの街で過ごした。
名うての乱暴者だった子ども時代のバーク卿は、いつもいつも暴れるのを宥めたのはベスと呼ばれた5つ年上の幼なじみの役割だった。
3つになる時にはフランクス(バーク卿)は既に日本でいうガキ大将で。近隣の子どもたちは彼を恐れながらも、人情に厚く面倒見のいい彼を慕った。家族仲もよく、一人っ子のバーク卿は跡取り息子として、何不自由なく育った。
けれど、それが壊れたのがバーク卿が十になるかならないかの頃。
バーク卿の父が信頼していた人間に騙され、社会的な信頼が失墜した挙げ句犯罪者として逮捕されたのだ。
おまけにその人間による巨額の借金が判明し、土地の権利書も会社も何もかも奪われ――一家に残ったものは何一つなかった。
バーク卿の父は拘留先の警察署で命を断ち、もともと病弱だった母は衰弱し寝たきりとなるが、お金がなくて医者にすらみせられない。
その日の食べ物すら事欠く有り様で、小屋の隅で踞っていたバーク卿に救いの手を差しのべたのが、もとは使用人だったバグゥエル家だった。