Schneehase~雪うさぎ 身代わり王子にご用心番外編




結婚直前にバーク卿は必死に女の家から脱出。行方不明となったエリザベスを何年も捜すも、やっと見つけた時、彼女は遠い地で全く違う名前で呼ばれていた。


記憶を失ったばかりか、バーク卿を見た瞬間酷いパニック起こし過呼吸状態になった。


そして、バーク卿はエリザベスが入院した時に知った。彼女には新しい夫がいて、生まれた子どもとともに幸せに暮らしていたのだと。


海に落ちて流され記憶を失ったエリザベスを救い、心身ともに回復を支え彼女の拠り所となった男性と会い、どうかこのまま忘れてくれと涙を流し頭を下げられた。そんな彼にエリザベスは微笑み、全幅の信頼を寄せた穏やかな目を向けた瞬間――彼女のそばにいるべきは自分でない、とバーク卿は悟った。


もしかするとエリザベスが産んだのは自分の子どもかもしれない。3つになったエリザベスの息子は、バーク卿によく似た鼻をしていた。


けれど、その子が親と慕うのはエリザベスとその夫。今さら、自分が名乗り出て、その幸せを奪うことなどできない。


最愛の人だからこそ、世界で一番幸せでいて欲しかった。バーク卿は自ら身を引き、夫にだけエリザベスの家族が生きていると事情を伝えると、そのまま彼女の前に二度と姿を現すまいと決意をする。


その間にバーク卿の母はエリザベスと彼の結婚を楽しみにしながらも、長年の心労がたたり死去。バーク卿はたったひとりでひっそりと息を引き取った母を看取った。


夢を叶えられなくてごめんと涙を流しながら――


バーク卿は何もかもを失った。愛する人も、家族も、懐かしい故郷すら奪われた。


そして彼は、力を欲した。


全ての不幸の始まりとなった、あの男へ復讐するために。


だが、階級がほぼ固定化されたイギリスでは対等の地位になるのは難しい。だからこそ、より柔軟な国へ――ヴァルヌスへ移住し、経済的成功と地位という力を得るために奔走した。


そして……


つい先日、復讐はようやく終えたばかり。あの男は政治家生命を絶たれ、犯罪者として投獄されたのだった。


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