Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
『……さて、どういうつもりかお聞かせ願えますかな?』
私を見返して問いかけるバーク卿は、私の意図を汲んでくれたらしい。チラリと取材クルーに目を遣り退出を促した。
『申し訳ないが、これより先は私のごくプライベートなこと。“カイ殿下の取材”をなさっておられるあなた方がお聞きする必要はないでしょう』
これ以上は聞くなと拒絶したバーク卿の迫力に呑まれ、取材クルーは渋々と部屋から出ていく。それを見届けた後、バーク卿は取材クルーが使っていたテーブルにあったペンを秘書に持って来させた。
『まったく、こすっからい人間はどこにでもいる』
バーク卿はペンをテーブルに叩きつけた上、手にしたビジネスバッグをふり下ろす。壊れたペンは、レンズや配線機器が剥き出しになっていた。
『盗聴器に超小型のカメラ……やはり、連中に聞かせなくて正解です』
『あなたはよほど注目を集める存在らしいですな。こうして隅々まで知りたい熱心な者までいるとは』
私が予想した通りに出てきた盗聴器をつまみ上げたバーク卿は、ニヤリと口の端を上げる。
『……いいでしょう。まず、あなたのお話をおうかがいします。協力するかどうかはあなた次第ですが』
椅子に腰を下ろしたバーク卿は、盗聴器を指先で押し潰す。エリザベスに少しだけ待つように、と言い別のテーブルで休ませた。
『どうやら他の盗聴器やカメラはなさそうですね。ならば、単刀直入に申し上げる』
調査を終えたアルベルトから報告を受けた私は、バーク卿をまっすぐ見据えて最大の目的を口にした。
『私には最愛のひとがいますが、今の私は彼女を迎えるには力が足りない――昔のあなたが苦しんだように。敵を倒すにはまだ何もかも不足している。だから……あなたの力をお貸しいただきたい』