Schneehase~雪うさぎ 身代わり王子にご用心番外編



『なるほど、で』


バーク卿は片手を軽く挙げると、私のそばに控えるアルベルトを見た。


『手土産は、どのような案件ですかな?』


バーク卿の目配せに頷いたアルベルトは、彼の秘書に用意した資料を手渡しする。秘書を通じ手元に渡った資料をバーク卿はすぐに開いた。


ファイルの1ページ目にある、とある地方新聞の記事。ごく小さな事故のそれを、バーク卿は怪訝そうに眺めた。


『とある地方の橋から川に人が落ちた……ですか。幸い怪我は軽症で済んでいる。この事故がなにか?』

『あなたはこの事故について何を思われますか?』

『……自殺か誤っての転落か……その辺りではないですかな?』

『普通はそう思うでしょうね。ですが、それは事故の原因を知らない人間の見解です。次をご覧ください』


私が促すままにファイルを捲るバーク卿は、次のページを一通り読んで眉を思いっきり寄せた。


『……原因は、橋の欄干が壊れたことによる落下? 観光客が記念撮影しようとしてそうなったとありますが。記事にはひと言もそんなことは触れてませんな』

『ええ、そうです。表向きは一般人が誤って橋から落ちたということになってますが。実際には違います……欄干が壊れたのは、部品の溶接が不十分なことと建材が粗悪で脆かったからです。築10年も経たない橋が腐食しているなど、普通は誰が考えるでしょうね?』

『……なんと』


次のページを捲ったバーク卿は、唸り声を上げた。


『入札後施行した業者があの男縁故の会社だったとは』


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