Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
戦い
バーク卿の協力を得ることに成功したのは、大きな収穫だった。
もちろん、通常の商談もきっちりと終わらせた。一番の目的が商談だったのだから蔑ろにはしない。
バーク卿は様々な協力を申し出てくれたが、悩みのタネであるマスコミ対策に意外な展開があった。
『はじめまして! ワタシ、エリィ·パッシィと言いマス。こっちは兄のアレックス。ヨロシクです~!』
人払いをした執務室でピッ! と片手を挙げて元気な挨拶をしてきたのは、20をいくつか過ぎた女性。
女性としては標準的な背の高さだが、小麦色に焼けた肌に輝く金髪という派手な外見をしている。癖のある金髪はポニーテールにされ、丈の短い紫色のスーツを身につけていた。
兄は肌の色は同じだったものの、髪の色も瞳も黒色でまっすぐに伸ばし襟足でくくっている。恵まれた長身で引き締まった体から、豹を思わせたが。その空気や身のこなしから、ただ者ではない空気を感じた。
『……もしや、あなた方は訓練を受けた人間か?』
『さすがはカイ殿下でいらっしゃる。私どもはあなたのサポート役にと派遣されました。インターネットを含むメディア対策と御身のご警護を担当させていただきます』
『どちらから、と訊くのは不粋のようだな』
『殿下がお知りになられずともよろしい“こと”はたくさんございます。そういった世界は私どもにお任せください』
アレックスの理知的な瞳はまっすぐに私を見据える。きっとその若さで、数多の修羅場を見てきたに違いない、確固たる意志がそこにあった。
『……シュトラウス公爵もその手の者を使うのか』
『答えるならば、“はい”。ですが、あなた様が思い煩う必要はございません。私どもに一任下されば全力を尽くしてみせましょう』