Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
『アルベルト、先手を打つぞ』
『はい』
私の意図を直ぐ様に汲んだのだろう。アルベルトは軽く頭を下げる。
『ちょうど王族の定例会見が明後日にある。公表するには絶好の機会だ』
ヴァルヌスでは半年に一度、王族の個人別の定例記者会見がある。帰国後初めてというか、実際には初の定例会見となる。
シュトラウス公爵の孫であるフランツは王族に準じた扱いになっている。成人したら参加するだろうが、今はまだ15と幼い。それは幸いと言うべきか。
先日、久しぶりに宮廷で会った彼は変わらず私を慕ってくれていた。兄弟がいない私には、本当の弟のように可愛く思える。
本が好きで物静かなフランツは、権謀術数溢れる宮廷に合わない。出来れば彼を傷つけたくはないし、醜い継承権争いに巻き込みたくはない。
『フランツのためにも、早くタヌキを駆逐せねば。なるべく穏やかに済めばいいが』
『恐れながら』
アレックスが私の言葉を遮ってきた。よほど急ぎたい話があるらしい。
『明後日の公表前に、私どもが動く許可をいただけますか?』
『そうデス! 表の根回しはアルベルトさんに任せマスが、ワタシがネットでいろいろと工作しておきますよ~』
アレックスの言葉を受けて、妹のエリィがにっこり笑う。
『工作……?』
『ハイ! それは見てのお楽しみデス~。けど、だいじょうぶ! カイ王子の不利にはならないから』
ピッ、とピースサインを出すエリィを見ていると、何だか不安を感じるが。彼らはプロだ。任せるのが一番だろう、と思うことにした。