Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
「なんだこれは?」
翌朝。朝の身支度をしている最中、アルベルトに見せられたタブレット画面に絶句した。
web限定配信の動画サイト。世界中の動画が集まるそこに、私のプライベートがまるっと載せられていたからだ。
“お食事中のカイ王子”
“お勉強中のカイ王子”
“移動中のカイ王子”
“休憩中のカイ王子”Etc.
しかも、投稿者のコメント欄にはふざけてるとしか思えない文章が英語とドイツ語と日本語で併記されていた。
“休憩中のカイ王子は、居眠りしそうでも頑張ってお仕事の続きをしてマス~。でも、たまにうたた寝して、この前はテーブルに頭をぶつけてました~”
“どうやらカイ王子は酸っぱいものが不得手なもようデス! 日本食の真髄である梅干しは残しちゃいけマセン~”
……何だか、意図的に情けない場面ばかり集めてるとしか思えない。
(いつの間にこんなものを撮影した……というか。これでは私がヘタレ王子と世界中に認定されるではないか!)
しかも、下手をすると桃花に見られて……情けない男と思われないか? こんな頼りない男を追いかけるのは嫌だとなったら。
頭を抱えたいというか、頭をどこかにぶつけ全ての記憶を消したい気分だった。
あの堅物のアルベルトさえ、必死に堪えてはいたが目が笑ってる。一通りチェックはしたのだろう。
仏頂面がデフォルトの彼を思い出し笑いさせるほどとは。お笑いやネタとしては優秀かもしれないが、私の面目は丸つぶれだろう。
肩を落としながらスケジュールを確認する私に、アルベルトは大丈夫ですと呟いた。
『彼らは予想外のことをしますが、やはりプロです。結果は火を見るより明らかです』