Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
そして、今日の昼食は一風変わった招待を受けていた。 富士美の新しいレストランに関するメニューの試食会らしい。
正式なメニューはオープン前に桃花にアレンジしてもらうが、今はひな形のようなだいたいのイメージを決めておきたい……とのことだった。
富士美とは以前から親交があったし、だいぶ前から招待されている。だから、スケジュールとしては不自然にならないだろう。
『ようこそ! カイ殿下』
会場であるホテルの部屋へ入った途端、富士美がものすごい勢いで接近してきた。それだけでなく、ぎゅ~っと抱きしめられた。息苦しいどころか、窒息しそうな力強さは流石だ。
「ふふ~相変わらず抱き心地良いんだから」
3つの頃から変わらない習慣に呆れながらも、彼女は最も信頼できる人間の一人だ。無意味なことなどまずしない。
「……桃花は元気よ。頑張って調理師目指してる。たぶん、あなたの動画を見たわね」
「……そうか」
「ふふ、あなた達はかわいいこと。それより、青を着てる方がそれだから間違えないでよ」
「わかった」
小声で短いやり取りをした後、富士美は澄ました顔で席へ案内してくれる。
やがて、青いエプロンを着た女性がやって来た。
年齢は20代後半辺りだろうか。栗色の髪を束ねたヘーゼルの瞳。あまり派手でなく、西ヨーロッパでは平均的な容姿をしていた。
『本日はお忙しい中おみ足をお運びいただきまして、恐悦至極に存じます。本日はわたくしが給仕を担当させていただきます』
丁寧な一礼だが、そこに特有の身のこなしを感じる。
なるほど、彼女が警察庁の窓口か。それが判った私は笑みを浮かべてよろしくと答えた。
『なにぶん、わからないことも多くて。いろいろと教えていただけたらありがたい』