Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
『パッシィ兄妹が意味深なことをあなたの公式アカウントで呟きました』
『……どんなことだ?』
『百聞は一見にしかず、です』
アルベルトは愛用のタブレット端末を差し出す。ほとんど私が関わっていないアカウントだが、彼らは考えがあって行っているのだろう。タブレットの画面を眺めると、こんな内容がツイートされていた。
“明日の記者会見ではビックリなネタを提供いたしましょう。皆さん楽しみにしてください。あ、ちなみにいろんな人に声をかけてみんなで見にきてくださいね!たくさんの人に見てもらいたいので”
「………………なんだこれは?」
まるでコンサート前のアイドルのようなノリではないか。
20を幾つか過ぎた人間の文章ではない。
まして、私はじきに王太子となる王子というのに。こんなはしゃぎっぷりを公式アカウントで流していたら、いろいろとよけいな心配をされてしまう。
ガックリと肩を落とし脱力感に満ちた体をシートに預ける。一度にどっと疲れを感じた私に、アルベルトから出たのは慰めと言えるかわからない言葉だった。
『よろしいではないですか。多少の親しみが湧いた方が間近に感じるものです。ただでさえあなたは隔たりがあるのですから、くだけたくらいで落ち込む必要などありません』
あのお堅いアルベルトからそんな肯定的な意見が出るなど意外で、まじまじと彼の無表情を眺めてしまった。
『おそらく、パッシィ兄弟は先手を取ったのでしょう。愉快なツイートであなたへの注目は集まりますから、記者会見では通常よりたくさんのマスコミが詰めかけるはずです』