Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
『公務の方は順調のようで何よりじゃ』
『はい』
祖父と私が一通り無難な会話を交わした後、私が買ってきた和菓子と緑茶が供される。
『あら』
母上が小さく嘆息したのは、おそらく懐かしいからだろう。私が購入したのは母上の出身地ではある程度親しまれた和菓子。幼いころから食べなれた甘味は、人を笑顔にする力がある。
『ほう、これはまた珍しい茶菓子だのう』
『そうですね。新しく出来る商業施設でも取り扱おうと考えています。まずは召し上がってみてください』
祖父はあまりスイーツを食べることがない。昔から甘いものが苦手という理由が一番だが、今は血糖値をはじめとした健康的な理由もあって糖分の制限をされている。
けれど、それなのにあえていかにも甘そうな和菓子を出してきたということに戸惑ったようだが。私は微笑んだまま言葉を重ねずに見守る。
私が買った和菓子。そこにはあるメッセージが隠されているのだが、祖父は気づいてくれるだろうか。
やや緊張しながらも表面上は冷静を装い、自分の紅茶に口をつける。
『……ふむ』
一口かじった祖父はその切り口を眺めると、突然大声を上げて笑い始めた。