Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
私は余分なことを言わず、ただ考え込む祖父を見守った。
『うむ』
祖父は何度か深く頷くと、目を開けてこちらへ視線を向ける。
『カイよ、明日の定例会見では何かを企んでおるじゃろ?』
『そうそう悪どいことをするつもりもありませんけどね』
悪ガキがイタズラでもするような口ぶりで、祖父はこちらへ話を振ってきた。
『ただ、私が本来せねばならなかったことと、正すべきことをきちんと正すだけです』
『それは、個人的な感情からか?』
『私情をこれっぽっちも挟んでないなどとは申し上げません。ですが王子として義務をきちんと果たし、信頼を得ることが先だと判断したまでです』
『ふむ』
お祖父様は顎髭を撫でながら、若干視線をずらしてうむむ、と唸った。
『それでは、そなたが留学した10年でその女性とは進展が見込めるのかね?』
『はい。はっきりと約束はしておりませんが、協力してくれる富士美からは確約を得ております。彼女はヴァルヌスへ向かうために最大限の努力をしてくれています。
私は、彼女が安心してこの国に居られるように、彼女に負けず努力をしようと誓いました。
ですから、彼女を脅かすものがあれば除いておきたいのです』