Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
桃花と、王冠。どちらを選ぶのか?
祖父の底意地が悪くも、当然の質問であった。
かつて、20世紀のイギリスでもアメリカのとある未亡人を妻としようとしても叶わず、結局未戴冠のまま1年で王位を捨てた国王もいた。
その女性も平民ではあったものの、離婚歴がある等の問題があって王妃に相応しくないと議会の反発を受けたのだ。結局、承認は得られずに王位を捨てることで彼女と結ばれた。王位を賭けた恋と有名だ。
(もしも同じならば私はどうするか)
桃花はもちろん未婚だから、そういった問題はない。だが、平民の上に親が既になく、後ろ楯もないとなれば、議会の承認を得るのは難しい。たとえあのタヌキを排除したところで、茨(いばら)の道になるだろうことは想像できた。
だが、と私はまぶたを閉じて思い浮かべる。
桃花と過ごした日々を。彼女の笑顔を。
今、桃花は私との未来を夢見て頑張っている。おそらくいち個人としては最大限の努力を。
昼間はフルに働いて夜は学校。ドイツ語の学習もしている上に、暇があれば富士美を手伝いマナー講座などで礼儀作法や美容についても学んでる。ヴァルヌスのこともみっちり勉強しているらしい。
それだけのことを眠る間も惜しんで頑張っているのだ。
私が、その努力を無駄にする訳にはいかない。
己の堅い覚悟を、改めて確認する。
まぶたを開いて、祖父である国王陛下を見据え宣言した。
『どちらかを、等とは言いません。私は桃花も王冠も諦めるつもりはありませんから、両方手に入れてみせます』