Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
戦い2
お祖父様の許可をいただいた午後、公務のためにベルンハルト城を出た。
『これから向かう施設が本日最後の公務となりますが、夜にはビジネス関連の会食がございますから気を抜かぬようお願いいたします』
アルベルトがよどみなくスケジュールを確認してきて、判ったとだけ返した。その間にもスマホで目を通すべき書類の確認をする。 このところビジネス関連で膨大な資料を読まねばならない上に調べる必要もあるから、夜はどうしても寝不足になる。
疲れを感じて目の間に指をあてれば、アルベルトには淡々と『仮眠をお取りください。公務の最中にうたた寝されては困ります』と言われ、お言葉に甘えることにした。
左に侍従長のアルベルト、右には護衛のアレックスに囲まれた、何とも微妙な環境ではあるが。今のうちに眠気をどうにかせねば、夜の会食にも影響が出そうだ。
『ありがとう、そうさせてもらう』
目的地まで片道30分以上ある。少しだけ、と言い聞かせ目を閉じた。
そして、次に目を覚ましたのは妙な振動を感じて。
安定感が抜群な車種に乗っているのに、不自然なまでに揺れる車内でハッと目覚める。
気がつくと、アレックスが私の身体を護るように覆い被さっていた。
『アレックス、いったいどうしたのだ? 私が仮眠中に何が――』
『お静かに。しゃべると舌を噛みます』
シッ、と唇に指を当てられて口をつぐむ。彼は、ただ聞いていてくださいと囁いた。
『あなた様の乗るこの車が崖道に入ったところで、襲ってきた車がございました。おそらく、事故を装いあなたを害そうとしたのでしょう』