Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
そして、何年も気になっていた少女――桃花と再会することができた。
とはいっても、自分が原因でひどい目に遭わせてしまったのだ。多少成長した今は、良心が咎めてまっすぐに顔を見れる自信がなくて。
情けないけれど、雅幸に頼んで高宮家のつてで夜の訪問を許して貰った。
2年ぶりに会えると嬉しくはあったけれど、彼女が眠っている時を狙っての再会。情けない……。
(もっと大きくなって……自分に自信が持てたら。ちゃんと謝って向き合おう)
臆病者かもしれないけど、その時の私はそう考えるのが精一杯だった。
村田家の娘にあれだけひどい仕打ちを受けた原因の自分が、何食わぬ顔でのこのこと会えるはずもない。 どれだけ憎まれ嫌われているかと思うと、怖かった。
見知らぬ自分にあんな温かく明るい笑顔をくれた彼女が……嫌悪を露にして。二度と笑ってくれないんではないか? と。
だから水科家を初めて訪ねた時に、事情を知るはずの母親や妹から歓迎されて驚いた。
水科家はごく普通のマンションの三階にあって、間取りも一般的なものだったと思う。
ただ、夜のかなり遅い時間にもかかわらず、父親の姿がないことは気になった。