Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
アレックスの言葉に、やはりという思いしかない。
ただ、解ったと伝えるために口を開かずに頷く。それだけで意図が伝わったのか、アレックスは再度シートベルトの装着を確認してから離れた。
『前後にいた護衛車は細工をされておりました。途中でエンジントラブルを起こし、離脱してます』
(離脱? 大丈夫なのか!?)
顔を見ただけで言わんとしたことを察したのだろう。アレックスは大丈夫です、と請け負った。
『護衛車に乗っているのはこちらの手の者です。相手の油断を誘うため、わざと細工を見過ごし罠にはまった“ふり”をしました』
アレックスはそう説明すると、チラッと運転席を見る。促されてミラー越しに運転席を見れば、そこにいた運転手が制帽を脱いで金髪をサラリとなびかせた。
『ハァイ! 王子様、よく眠れたようデスね』
『エリィ!?』
思わず名前を呼んでしまうほどに意外な登場に、エリィはイタズラが成功したような笑みを浮かべた。
『ハハハ、王子様ビックリさせた~! 今のバッチリ撮ってるから、また動画サイトにUPするネ~』
『やめろ! なぜオレの情けないところばかりあげるんだ……あが』
思わず本音が駄々漏れして、素の自分で抗議をしたら……
舌を噛んだ。
地味に痛い。
涙目になった私を見て、エリィは遠慮なく声を上げて笑う。
『エリィはあれでも凄腕のドライバーです。国際的なライセンスを持っておりますから、信じてお任せください』
彼女の兄であるアレックスの冷静沈着な言葉には、黙って頷くしかなかった。