Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
インターネットによるリアルタイムの生中継は、編集によるごまかしなどきかない。このサイトは生中継された映像を録画して後から閲覧も可能だし、アカウントさえあればYouTubeへのアップも容易らしい。
今、話題の作品として私の映像が挙げられている。閲覧数はかなりのもので、それだけの人間がタヌキの悪行を目撃したのだ。
何十万もいる世界中の閲覧者を一人一人特定して捕まえることなどできまい。
タヌキが悔しげに顔を歪ませる様子を想像して、私は笑いを堪えることができなかった。
『――やってくれたな、エリィも。朝にはなかなか面白いことになりそうだ』
『おそらく、一番に動くでしょう』
タヌキが、とアルベルトは付け足したかっただろうが、名前は出さずに口をつぐむ。
『ああ、まずはサイトへ動画削除の脅しをかけるはずだ。それから』
マスコミと警察と軍部への圧力と介入。持てる権力を使い私を潰そうとするだろうが、そう易々と目論見通りにさせてやるか。
警察から送られてきた捜査に関する情報を眺める。本来なら違法とも言える漏洩かもしれないが、タヌキの暴走を押さえることができるなら、とタヌキと一部幹部の癒着ぶりを危惧していた良心的な上層部が自ら協力を申し出てくれたのだ。
(これで、駒はすべて揃った)
すべては、今日の定例会見でだ――パタン、と勢いよくノートパソコンを閉じてアルベルトへ命じた。
『アルベルト、今夜はもう休んでしっかり回復させておけ。明日から忙しくなるからな』