Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
『いやあ、しばらく見ないうちに大変面白いことになってますねえ』
ベルンハルト城で記者会見会場となる広間の控え室で、ニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべているのは、アルベルトの叔父で宮内庁次官のフランク。
栗色の髪を流した整った顔だちと軽薄な雰囲気の通りに、数多の女性との話題には事欠かない。今も黒のスーツに身を包んではいるが、日本で言うホストにしか見えない。
甥のアルベルトとは何もかも正反対だが、宮内大臣であるアルベルトの父が渋面を作るような事柄でも、大抵この男が許可をもぎ取ってきたのだ。
私個人のTwitterとFacebookのアカウントやYouTubeの公式チャンネルも、パッシィ兄妹を通じてこのフランクが許可を得たから実現した。
軽薄だが、頼りになる。仕事にはきっちり公私の区別をつけるし、一見馴れ馴れしい態度をとるが、ちゃんと一線を引いてそれを越えることはしない。すがすがしいほど分を弁えた人間なのだ。
『おもしろいと言えば、たしかにそうだな』
『でしょ、でしょ? あのタヌキに一杯喰わせるなら、ぼくも全力で協力させてもらうよ』
40過ぎて自分をぼく呼びもないが、フランクは第一の基準がこれだ。
“楽しいか、楽しくないか”。
どうやらタヌキに関わるから面白いと判断したようで、力一杯協力を申し出てきた。