Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
対決
ベルンハルト城内にある広間の一つである、白鳥の間。大理石が使用されたそこは小規模なパーティーが開ける広さがある。
王族の定例会見がベルンハルト城内で行なわれるのは、第一に身辺の安全を考えてだ。
城内へ入るには厳しい検問や度重なる検査を受けた上で、確実に身元を保証できる人間でないとまず無理だ。たとえカメラマンと記者でも例外ではない。
会見場では一社につき一人しか入れないし、国の中枢に入ったからには相応の振る舞いが要求される。聞いたことがないゴシップ紙の記者などまず入れない。
こういったことも差別とか騒ぐ輩もいるかもしれないが、親しみやすさと大衆化は似て非なるもの。何でもかんでもオープンにして、誰も彼も好き勝手に来てくれ! 等としたら、品がなくなってしまう。
国家を担う場にいるならば、品格や規律というものは必要だ。きっちりと一線を引くことが大切なのだ。
それに国の中枢へ訳のわからぬ輩を安易に入れれば、暗殺やテロが横行してしまうだろう。
それにしても、今回は記憶にあるより近衛の数が多い。おそらく宮内庁次官であるフランクの指示だろう。とっさの時があっても対応出来るように、と。
(それだけ私の決意を理解してくれたか)
選り抜かれた記者達の手には、配られた資料が見える。前もって目を通す記者達から控えめであるがどよめきが広がっていった。
(いよいよだ……桃花、私に最後まで戦う勇気を与えてくれ)
最愛のひとが初めてくれた雪うさぎ。その唯一の証である南天の実を入れた小袋を握りしめ、祈るように天を仰ぐ。
数度、深呼吸をしてからキッと前を見据え、第一歩を踏み出した。