Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
『私より皆様にご報告いたします。私カイ·フォン·ツヴィリングは日本での10年間に渡る留学を終え、ここヴァルヌスへと戻ってまいりました』
私がそう公表した途端、シャッターを切る音が明らかに増えた。
『今まで報道協定が遵守され、私の留学に関しては一切報道されることなく、無事に帰国することが叶いました。各位の努力に感謝します』
ゆっくりと、落ち着いて話す。一字一句間違えないように。
私が一旦口を閉じると、記者団から幾つか挙手がされる。当然だな、と思いながら宮内庁職員が質問をする記者の名前を呼んで促した。
『不躾ながら、カイ親王殿下にお訊ねいたします。10年間ヴァルヌスにいらっしゃらなかったとのことですが、それではカイ殿下として振る舞ってらしたのはどなたなのですか?』
『私の代わりを務めた方は、高宮 雅幸と申します。私の父方の従兄で、祖母が先代陛下の王女殿下となります』
『日本人を身代わりとなさったのは理解いたしました。ですが、なぜ10年もヴァルヌスを離れていらしたのですか?
長きに渡り国民を欺かれたことに関してはどうお考えなのでしょうか?』
(やはり、核心に斬り込んできたな)
されて当然の疑問に答えるべく、記者団をしっかりと見据えた。